好きを極めた乙女の駆け引き


「なに?」

「ここ、圏外」

「え、そんなことある? 安心院くん、呪われてんじゃない? その二面性、絶対、人の恨み買って、呪いのわら人形つくられてるよ」

「古風な単語だしてきたな」

「まあでも、片方が隠れればいいなら、先生があとで来ると思うから、それを待てば出られるかも」

「先生くるの?」

「わたし、先生に頼み事されて椅子を探しにきたから」

「そ。じゃあそれまで、待機だな」





チク、タク、と。時計はないのに、秒針の音が頭の中に響く。

あれからどのくらい経っただろう。

永久のような時間が経ったように思うし、まだカップ麺ができ上がるくらいの時間しか経っていないようにも思う。

静けさが、倉庫を支配する。そんな中で、前触れもなく、


「なあ、いんちょー」

ささやくように呼ばれた。


「なに?」


わたしたちは、倉庫の棚を背もたれにして、隣り合って座っている。間に人がふたりくらい入れる距離はあるけれど、隣にいる。


「いんちょーは、俺のことどう思ってる?」


それこそなんの前触れもない質問だった。

「は?」と訝る声とともに、顔が安心院くんのほうを向いた。