捨てられたはずの私がクールな御曹司に溺愛される話。

リュックひとつ分の荷物をまとめ終えた。
それから今まで使っていた屋根裏部屋にさよならを言い、リビングに戻ってきた。

あっ、バラが散らばったままだ…。

急いで新しい花瓶を持ってきて、水をいれてバラを入れた。
よし、これで枯れないですむ。

どうやら、花音さま達はどこかに出かけたようでリビングには誰もいなかった。

ありがとうございました、とだけは伝えたかったんだけどな…。

リュックから付箋を1枚取り出し、鉛筆で
『今までありがとうございました。』
と書き、ダイニングテーブルに貼った。

玄関をでて、門を通り抜けた時なぜか無性に泣きたくなった。

この家とも今日でお別れか…。

「今までありがとうっ。」

そう言い残して私はこの家を去った。