捨てられたはずの私がクールな御曹司に溺愛される話。

私がそう言うと、心なしか九条さんは少し悲しそうな表情になった気がした。
それを見てなんだか余計に申し訳なく感じてしまった。

「そうか…。」

「で、でも!呼び捨ては難しくても…蓮さんとお呼びすることはできます…!」

これが私の限界だった。そもそも男の人とほとんどというかほぼ喋ったことのない私にはさん付けで呼ぶのですら少しの躊躇いがある。

「…分かった。今はそれでいい。」

「え…?」

「何でもない。こっちの事情だ。」

今はってどういうことだろう…?

はぐらかされてしまって、それを聞くことは出来なかった。

「いつまでも立ち話してるのは疲れる。家、案内する。」

「そうですよね、ごめんなさい…!よろしくお願いします。」

「すぐに謝るのはやめろ。ずっと言ってると安っぽく聞こえるぞ。」

「ごめっ…、分かりました…!」

「それでいい。」

蓮さんはふっと微笑むと満足したようなのか部屋の案内を始めた。