捨てられたはずの私がクールな御曹司に溺愛される話。

「ごっ、ごめんなさい……。」


「何してくれてるのよっ!これ、気に入ってたティーカップだったのよ!?」


「本当ににすいません……。」


私は必死に謝りながら、急いで割れたティーカップの破片を手で片付け始めた。

どうしよう……。

美智子さまがとても気に入ってたティーカップだったのに……。

私の不注意で落として割ってしまった……。


「お母様っ!近づいたら危ないわっ!
もし、手が切れてしまったらどうするのっ!」


「そうね、危ないわっ。切れてしまったら大変だものね。ありがとう、花音。あなたはやっぱり優しいわね。……それに比べて’’鈴’’は、わたくしの心配も一切しないし、全て雑ねぇ。」


「……っ、本当にごめんなさい」


「もう、いいわよ。謝られても、ティーカップはもう戻らないんだもの。」


ほっ。そっと私は、内心で安心した。

よかった……っ!
今回は何もなさそうだ……。

グイッ!!!


「……っ!」


痛っ……!

突如、美智子さまが私の髪の毛を鷲づかんで思いっきり引っ張ってきた。


「ほんっとにあんたは何回言っても言うことが聞けないのねっ。
’’鈴’’なんだから、自分の身分をわきまえなさいよ。」


「ごっ、ごめんなさいっ!
許してください……っ!!」


「あんたがやったことは許さないわ」


「許されなくてもいいですっ!
髪の毛を引っ張っるのはやめて頂けないでしょうかっ……。」


「あんたなんかが私に命令できる立場じゃないでしょ?
自分の身分をわきまえて行動しなさいっ!」


そう言うと、フンッと鼻を鳴らし、乱暴に私の髪の毛を振り払った。


「あんたと会話してると私まで汚れた人間になりそう。
ほら、花音、これからピアノのお稽古よね?急いで行きましょっ」


「そうね、お母様。今から支度をしますわ」


美智子さまはスタスタと去っていった。
だけど、花音さまはまだこの場に残っていた。


「鈴!」

いきなり花音さまが私のあだ名を呼んだ。


「はいっ」


「あんた、余計なことをしないでよね、あのクソババアの機嫌が悪くなるじゃん。」


「……っ」


「…返事は?」


「…っはいっ!」


「そう、あんたはあたしにこき使われてればいいの。
これからもメイド…いや、奴隷としてちゃんと働いてよね?」


作り笑いのような笑みを浮かべ花音さまは去っていった。