「彩奈は、第2ボタン、貰うんでしょ?」

第2ボタン、大切な人に贈るという、伝説。

彩奈には恋人がいる。

「うん、裕翔(ゆうと)くれるって言ってた」

「いいなあ、恋人いる彩奈は、ちょうだいって言ったらもらえる関係値まで、もう築けてるんだもん」

私は好きな人に振り向いてもらうどころか、気持ちさえ伝えられてないのに。

私は幼馴染の恭弥(きょうや)のことが好き。

好きって気付いたのは割りと早かった、幼稚園の遠足で迷子になったときだった。

みんなと離れ離れになっちゃって、ずっと手を繋いでいてくれたこと。

『咲ちゃん、大丈夫だからね、恭が付いてるからね、手、離しちゃだめだよ、僕がみんなを見つけるから』

幼いこの当時の私は、ときめいちゃったんだよね。

それから、意識し始めてずっーと好き。気づかれないようにしてるけど、勉強教えてもらってる時とか、たまに手が触れたり、距離近くて、心臓バッグバクで。

「咲華も伝えたらいいのに、恭弥くん、高校離れちゃうらしいし」

「しってるよー、恭弥、かっこいいからさ、人気高いんだよ、きっと、周りの女の子にあげちゃうよ、私がほしいのになあ、なんでこうわがままのくせに頑固なんだろ、私」

「そんな好きなら尚更気持ち伝えた方がいいって」

彩奈は、私の肩を軽く2回ほど叩いた。

「私に勇気がないの知ってるじゃん…」

「だってもう、高校入ったら、学校違うし、中々、会えなくなるかもしれないんだよ?」

「そうだよねー、卒業だもんね。そっかぁ…。悲しい」

「勇気出しなよ」

彩奈は両手をグーにして、手を上下に振っていた。

「んー、頑張ってみるかぁ」

「よく言った!」

勇気を出して気持ちを伝えてみることにした。