「そういえばまほ、弁当ありがとな」

「あ!そうだ!まだ感想聞いてなかった!美味しかった!?」

食い気味に質問すると「うん。すげぇうまかった」と言ってはにかんだお兄ちゃん。

またドクン!と大きく胸が高鳴る音がした。

「へへっ…」

***

やがて、花火は全て終わったみたいで。

夜空には花火の余韻を残すかのようなわずかな煙が泳いでいた。

「花火終わっちゃった…」

さっきまでバンバン!騒がしかったのに。

今は夜の静寂の中、かすかに鈴虫の鳴き声が優しく鼓膜を撫でていた。

「また来年も見たらいいだろ」

来年……。

少し想像してみたら、ワクワクした。

「うんっ!!」

来年も。

クラスの子達とじゃなくて。

お兄ちゃんと見たい。

その時は、今日みたいにパジャマ姿じゃなくて。

浴衣なんか着て。

髪の毛もおしゃれにしたりして。

とびっきりかわいい姿で、もっと好きになってもらえたらいいな。












そんなささやかな願いが打ち砕かれる日が来るなんて。

この時の私はまだ、















夢にも思わなかった​───────。