桃花が察知し、寮の高層ビルから降りた二人。
 
「何処へ行く!?」

「あっちの方!」

 もちろん、地図などわからない。
 桃花は嫌な空気を感じた方向を、指差す。

「なにか不穏を感じたか?」

「そうなの! あの黒い霧を感じた……どうしてかわからないけど……」

「来い、桃花」

 腕を引かれて抱き寄せられ、そのまま抱き上げられる。
 『何を言ってるんだ』と言われても仕方がないのに、紅緒はすぐに桃花を信じてくれた。
 
「お、重いよ!?」

「バイクは怖いんだろ? 全然、重くなんかないさ」

 まだまだ行き交う人の多い道路。
 振り返ったサラリーマンがギョッとしたのがわかった。

「は、恥ずかしいっ」
 
「察知されない護符を発動するさ! 行くぞ!」

 指差す方向へ、紅緒は更に加速度を増して走る。
 ヒュン! と風を切った。

「わっ」

 飛び上がり、電柱の上に立つ紅緒。
 ふわりと重力が離れたように感じる。

「此処からだとより、わかるか?」

「うん! ……あ、あそこの大きな木のところ!」

「あそこは公園だ……」

「ひゃあ!」

 電柱から電線を走る。
 あやかしの力なのか、二人の体重がないようだ。