山に咲く桜が、まだ蕾の頃。
「やっぱり引っ越ししなきゃ……ダメなんだよね」
田舎の村で育った少女、朱雀桃花。
中学校の卒業式を終えた春休み。
昨日から引っ越しの準備をしている。
生まれた頃からずっといる村を出て、一人で都会の学園寮へ行くことになっているのだ。
「桃花……これは、あなたの為だって言われているの。でも都会もとってもいいところだし、あなたなら大丈夫」
引っ越しの準備をしながら、お母さんの方が涙を拭っているのは知っていた。
「うん、なんとか頑張るよぉ~」
桃花も寂しくて仕方ない。
昨日もお友達が開いてくれたお別れパーティーで泣いてしまった。
「……あの時……不死鳥に関わらなければ……いいえ、そしたらあなたは、あの時にもう……」
「お母さん?」
都会で通う高校の制服は、綺麗な赤色のセーラー服。
それを畳みながら、切なそうに呟く母が気になった。
「桃花ーーー!!」
「お父さん!?」



