全員が荒い息を吐いていた。誰も何も言うことができない。先ほどの出来事があまりにも強烈すぎたためだ。ルーチェも肩で大きく肩を上下させ、上を見上げる。洞窟の天井は数十メートルも上にあり、自分たちはあそこから落ちたのだと思うと体が震えた。

足場がなくなり落ちていった後、ルーチェたち魔法が使える者同士が協力して落下速度を緩め、クッションを出して何とか地面に降り立つことができた。その時のことを思い出し、ルーチェの足から力が抜ける。

「大丈夫か?」

崩れ落ちそうになるルーチェの腕を、素早くオリバーが掴んだ。剣術の心得のあるオリバーの腕は自分のものとは比べ物にならないほど逞しい。

「オリバーさん、ありがとうございます」

ルーチェはお礼を言った後、フェリシアーノとサクラと話すクラルをチラリと見た。クラルも剣を扱う。しかしオリバーのものとは全く違う腕だ。一見すると、剣など握ったことなどないかのように筋肉がついているように見えない。

(逞しい腕よりも、クラルみたいな腕の方が好きかな)