「な、何でしょう……?」



「会って早々悪いけど、僕たちは予定があるからここで失礼するよ」



「えっ? そうなんですか?」



「うん。それに今日はもう遅いし、ここに泊まってゆっくり体を休めるといい」



「はい、あの……」



「おやすみなさい。いい夢を」



聞きたいことは山ほどあるのに、一方的に、たたみかけるように会話を打ち切られてしまった。



一葉さんは、呆気に取られた私の体に布団をかけると、理音さんと大河の背中を軽く叩いて、この狭い部屋を後にする。



最後に棗が、(いぶか)しむような目つきで私を一瞥(いちべつ)すると、何事もなかったかのように、この部屋の電気を消して出て行った。




バタンとドアが閉まる音が、暗くなったこの空間にやけに響く。



「何だったんだろ、あれ……。ってか、結局何も聞けなかったな……」



一葉さんが、闇夜の帝王のカズハさんなのか、そうじゃないのか。



本当のところはどうなのかわからないけど、今夜はもう気にしない。



明日も平日で学校があるし、このまま寝るとしよう。



私はベッドに横になると、一葉さんがかけてくれた布団に丸まって目を閉じた。