再び彼女がやってきた時、僕は他のお客様を担当していた。
すると彼女は、僕の手すきのときに来るといい、指名予約を入れて帰ったという。

それを聞いて唖然とした。
冗談じゃない。
この前あんだけ怒っといて指名ってどういうことだ? 嫌がらせか!

僕の困惑をよそに、彼女は怒ったことなどサッパリ忘れた顔でやってきた。

そして、シャンプーに細かく注文を付ける。
「前髪はゴシゴシしたらあきません。それでなくても薄いのに禿げてまう」
「襟足はもっと力入れなはれ」
「終わりのシャワーは少し熱めがよろしい」
まるでウザい教師だった。

さらに時々瞬間沸騰で激怒する。
「耳にかかったがな! この、ボケッ。中耳炎になったらどないしますの!」
僕は戦々恐々として施術した。