「そういうことじゃなくて…」
「ほら、最後まで言わないと分からないって学習してよ」

直季の言葉に細谷ルミはバッグを抱えると、顎を引いて上目遣いになる。

「コウノさんと俺ら、親しくないし…どっちかって言うとあんま仲良くないんだよね」
「そうそう、邦親の言う通り。だからそっちで仲良くしててよ」

俺と直季の言葉にも身動きしない細谷ルミに

「男と仲良くしたいの?もう、そうしかないよな…」

正季くんは高々と言うと

「おーい、この子と仲良くしたいセンパイ、男限定で大募集だってよ」

と大きく手を振り回した。

わらわらと数人が集まるので、俺達はやっとさゆみんと校舎へ向かう。すると

「あの子、よっぽどさゆちゃんポジが欲しいんだな。気をつけて、さゆちゃん」

北中くんがさゆみんにそっと言う。

「北中くん、大丈夫。俺が一緒に帰るから、さゆみんは一人にならない。なっ、さゆみん?」
「うん…そうだね…さゆちゃんポジって何?」

俺にちゃんと返事したのに、そこ?俺達がクスリと笑うと

「笑うとこ?分かんないでしょ?彼女、アタシになりたいワケじゃないもの…たくさん食べたいワケでもなさそうだし…こわーい、とか言ってたんだし…」

さゆみんが真面目な顔で俺を見るから

「ほら、こうして俺達に囲まれてるさゆみんの位置にいたいってこと」

と真面目に教えてやる。

「そう…無理だよね…最初に細谷ルミが嘘ついたんだから。クニチカたちが困った時にはアタシも助けるからね。アタシの停学のことって、そういうことでしょ?やっと…少しだけ友達とかって分かるから、アタシも助けるよ」