「ああ~西名ちゃん、それあるね。邦親を置いて僕と売店に行こ。休みが終わっちゃうよね」
「まーった、待った、マッタ、待ったっ、直季は無視…さゆみん、待てだよ。Stay…」

慌ててさゆみんを指差すと

「…犬?クニチカ、犬を飼ってる?」

さゆみんのライフが少し戻った気がした。飼ってるよ。さゆみんは犬が好き?けど、このギャラリーの前でうちのペットを発表するつもりはない。後でさゆみんだけにいくらでも教えてあげるよ。

「ここで聞いているみんなに、ちょうどいいから言わせて」

俺は残り時間を考えて、早急にこの場を終わらせるためにギャラリーへ声を発した。

「先週、あまりにも理不尽な停学を目の前で見て俺は動いたんだけど、思いも寄らない…ホントたっくさんの協力っていうか、賛同っていうか…ありがとうございましたっ!!」

3年生もいるのでガバっと頭を下げておく。これでここはいいだろう…と思ったとき

「あ…アタシも…クニチカに便乗して…ここで」

さゆみんが俺とギャラリーを不自然にカクカクと見回すと

「…いろいろとありがとう…ございました…」

ペコリ…カクッ…と小さな頭を下げた。

グォ…ゥ…ワァ…あぁあああァァァ……ギャラリーのわけが分からない声が学食を揺らすと、さゆみんが分かりやすくゲッソリする。俺は彼女の手を引いて、まだまだ揺れ続ける食堂から抜け出した。

「……脱出…成功…」
「お疲れ、さゆみん」
「ん…クニチカ…すごいね…」

俺の鼓膜を揺らすカワボにピクッと反応すると

「たくさんの人の前で話せるんだって思って…アタシにない才能がある人って尊敬するから」

さゆみんは俺の全身をピクッ…どころか、ピクピク…ビクンビクンさせる言葉を連ねた。