「チカ、カッコいい。最高。メガネも踏み潰されて、心も踏み潰されて…って、見てなかった俺にも響いた。女の子には優しい世界じゃないとね」

北中くんが俺の頭をくしゃっと撫でると、黄色い声がキーンと空気を揺らし、それはすぐに絶叫や雄叫びへと姿を変える。

“女の子には優しく”というワードを多用する北中くんは、砂糖系ベビーフェイスに合わせたキャラ作りをしているのかと、いつも思う。

「チカが最強っていうことだな」

正季くんも俺の頭をくしゃっと撫でると、それを聞くギャラリーがいることによって俺の最強伝説が出来上がってしまった。

違うんだ…俺のこの最強伝説は必要ない。西名さんの言う“アタシより強けりゃネ”は、こういうことじゃないんだよ。

彼女はガチ勢の強さなんだと思う。戦闘を目撃したワケではないけど、片手で瞬時に男の腕を捻り上げる…それも左右の手で二人もって普通では出来ない。

昨日、俺も彼女に腕を取られた時“動けない”と思ったし、どっちにどう動けば体の自由が得られるのか分からなかった。彼女の方が20センチ近く小さい感覚なのに。

どうするか…

俺は“暇潰し告白”をした相手の言う“アタシより強い” に見合うようになろうと真剣に考えている…彼女の顔を思い浮かべながら。