「後ろ、遠足か修学旅行みたい」

直季の声に先頭を歩く正季くんと俺、そして話に乗っかってきた北中くんが後ろを振り返る。

ギャ~、キャ~、キュ~ン…ごーくーん…

「北中くん、手を振るのやめて。それか、手を振って別の道を行ってよ。うるさい」
「そんなので収まる?これ、駅から人が溢れんじゃない?」
「うーん…」
「本当に遠足に行く?」

俺に続いて北中くん、正季くん、直季が言うと

「先頭、止まりなさーい。学園に戻れぇー」

車の助手席から拡声器を持った副学園長の声がする。

「「「「無視」」」」

俺たち4人はそれぞれ小声で呟いても、すぐ後ろの生徒から徐々に大きなウェーブとなって“無視”“むし”“ムシ”“無視”と後ろへ伝わっていく。

「君たちも停学処分に…」
「「「「どうぞ」」」」

ここで歩道が途切れると、俺たちの前に車が割り込んだ。

「俺は昨日、前田先生と他の先生に、西名さんは喧嘩していないことも悪くないことも伝えました。でも1週間の停学処分って決定してる。おかしいでしょ?だから大きな不信感を抱えての授業放棄、学園生活放棄です」
「西名さんの家庭へ連絡したところ、言い訳することなく処分を受け入れたんだ。非があると認めたということだよ」
「認めたんじゃなくって諦めたのでは?可哀想に…メガネも踏み潰されて、心も踏み潰されて…酷い仕打ちですね」

俺の言葉が聞こえた生徒から副学園長に向けて大ブーイングが起こる。その中で、昨日メガネなしだった彼女はコンタクトだった?いや…一昨日メガネを取られても見えづらい風ではなかったか…伊達メガネ?とジゲチ美少女を思い出していた。