「用意出来たか?車、きぃが下で待ってる」

ノックもなしにドアを開けたしもっちゃん、下田(しもだ)カケルに

「おかえり、じいちゃんと一緒だったんでしょ?」

と鏡越しに聞く。

しもっちゃんは私に勉強を教えてくれる人。ユキちゃんは身の回りのことを教えてくれる人。きぃちゃんはケンカ…じゃなくて色々教えてくれる人。

ざっとこんな役割分担?きぃちゃんは一時、私のお世話係みたいでもあったから、勉強も遊びも教えてくれたけどね。

「うん。大将はまた出たね」
「大丈夫かな?」

じいちゃんは69歳。あまりバタバタ忙しいと疲れるお年頃だと思うけど、異常に元気だ。

「大丈夫。すぐに戻れる仕事だから、夕食は一緒に食べる」
「そっか」
「一緒に買い物して来た」
「夕食、何?」

ユキちゃんに髪を仕上げてもらう私が聞くと

「幸矢、ありがちじゃなくて、もっと派手に仕上げてやれよ」

と、しもっちゃんがユキちゃんに並んだ。

「目立っちゃいけないのよ、今夜は。目立っちゃいけないけど“友人もおられたわよねぇ”となる程度がいいの。だから、ありがちハーフアップでオーケー」
「オーケー、オーケー。で、夕食、何?」
「披露宴で食べるだろ?」
「本当は家のご飯がいいもん。仕事ご飯だよ、今日は。アタシ、可哀想…」