「歌恋ー、準備終わったぞー」

「わかった、今行く」


 海兎を眺めるのをあきらめて、近くの桜の木の下でしばらく目をつぶっていると、海兎に呼ばれた。

 準備が終わったようだ。

 海兎のもとへ行くと、お弁当箱もあり、いい匂いが漂っていた。


「海兎のお母さんが作ったやつ?」

「あぁ、今日のためにな」

「へ~おいしそう」


 海兎の家はレストランをやっていて、人気店だ。

 私もたまにおすそわけをもらったりしていて、お母さんやお父さんも大好物だったりする。

 海兎も家のレストランを継ぐために、努力をしている。

 …そうゆう、自分の夢を一生懸命追いかけるところがかっこいいんだよねぇ。


「あ、その卵焼きちょうだい」

「いいよ。はい、あ~ん」

「え」


 え、えぇ!

 な、ななななんで!

 あ、あ~んなんて…。

 カップルみたいじゃない…!

 う、うれしいけど…。


「あ、あ~ん」


 は、恥ずかしいけど…。

 いつもだったらやんないけど…。

 今日はエイプリルフールだし…!

 今日くらいは…素直になるって、自分と約束したもん!


「っ!」


 な、なんか海兎が真っ赤になってる…。

 でも、私も同じくらい真っ赤になってそう…!

 や、やっぱり恥ずかしいなっ…!