「そういや、カナ知ってた?」
「何を?」

「明日転校生が来るんだってさ」
「ふーん。」
「それが…」

興味がなさそうな私の目の前に、画面を少し明るくしたスマホをセイは差し出す。
私はチラッとその画面を見た。

「『グローバル…ボーイズグループ…?』」
「すげぇよな。今をときめくスターが転校してくるんだとよ」

何人か写っている画像の真ん中をセイは指さした。
私には眩しすぎるくらいキラキラした笑顔でこちら側、カメラのレンズを見ている。

それが何であろうと、私は興味が無い。

「かっけぇよな…」
「え?セイの方がかっこいいよ。」

私は低めのトーンでボソッと言葉を放つ。
セイは「おいおい…」と言いながら自分の右手で顔を覆っていた。
何となく、耳が赤い。

「私、別に顔とかで判断してないから。」
「…それは地味に傷つく。」

セイは冷静になったのか、一瞬で顔を上げてじろりとこちらを睨むような視線を向けた。
私はその顔が面白くて少し笑ってしまった。



家に帰ってベッドに横たわると、ふと脳裏をよぎる。
セイが見せてくれた画像の男の子。

(あっ…)

私は咄嗟に思い出した。
いや本人かは定かでは無いけど。
少し顔が整っているような男性がレジに並んでいたような…
マスク越しでも美形であることが分かった。

(そんな偶然あるのかな…)

何か声をかけられたような記憶はあるけど、それが果たして何だったのか。

思い出す前に私は疲れて寝てしまっていた。