転校生、ねえ。
まあ、俺が関わることもないだろ。
礼儀正しく「よろしくお願いします」と頭を下げてから、彼女は先生に指定された俺の隣に腰を下ろした。
「それで、ちょっと七瀬くんにお願いがあるの」
「え、なんですか」
「松山さん、まだ教科書とかが届いていないの。だから、届くまで見せてあげてくれないかな」
…前言撤回。全然関わる、というか関わらなければいけない事情ができた。
別に断ってもよかった。
女と絡んだところで疲れるのは嫌というほど分かってる。
何かと面倒なことを言われてネチネチと長期戦に突っ込んでいく。
女なんて、自分勝手でメンヘラで。
…でも、松山さんなら。
少なくともこのクラスの女よりは面倒では無さそうに見えたんだ。たった、それだけの事。
「分かりました。いいですよ」
そう先生に返事をすると、クラスの女はすぐに騒ぎ始める。
『え、あの七瀬が女子に心開いた…』
『もしかして松山さんのこと好きなの?!』
ああ、もう。これだから女はめんどくさいんだ。
「うるさいよ。憶測で人のこと勝手に語るなよ。松山さんだって迷惑してるだろ。見てわかんないの?」