桜が咲き始めた4月上旬。


いよいよ俺も先輩になるんだなぁ。
2年になったというのに、俺の心はまだ追いついていなかった。


桜は綺麗なピンク色に染まってるけど、風は4月に似合わないくらい冷たい。



……あ。やっべ。

呑気なことを考えていたら、遅刻判定の時間まであと5分。

学校に着いてからも猛ダッシュして、教室に入る時なんて駆け込み乗車をしているようだった。



「遅いよ七瀬くん。1分前ね」

「す、すみません…」



上がる息を整えることもせず、カバンを雑にロッカーに押し込んで席に着く。



「今日は紹介したい人がいるの。入っていいわよ」



全然気がつかなかった。

廊下に待機していた彼女の存在に。




「松山 美愛です。よろしくお願いします」

「席はそうね、七瀬くんの隣。一番後ろが空いてるからそこに座ってね」

「はい、ありがとうございます」