「素直になりたくない」
先輩のケンタは、素直になることが苦手だった。
自分の感情を素直に表現するのが恥ずかしく、いつもクールを装っている。
美咲はそんなケンタの性格を理解していたが、時々、ケンタの本音が聞きたいと感じていた。
エイプリルフールの日を前に、美咲から「4月1日は、嘘をついてほしい」と提案される。
最初は乗り気ではなかったケンタだが、美咲の真剣な眼差しに負け、一日限定で素直になることを約束する。
4月1日、デートの待ち合わせ場所で再会した二人。
ケンタは照れくさそうに、普段は言えない「会いたかった」を素直に伝える。
美咲はそんなケンタの姿に驚きつつも、嬉しさを隠せない。
一日限定の "素直デート" が始まった。
普段はクールを装うケンタだが、この日ばかりは自分の感情を素直に表現する。
好きな食べ物、行きたい場所、将来の夢など、次々と本音を打ち明けていく。
美咲はそんなケンタの新しい一面を知り、さらに惹かれていった。
デートも終盤に差し掛かり、夕暮れの公園を散歩する二人。
ケンタは恥ずかしそうに、美咲への愛情を言葉にする。
「俺、美咲のことが好きだ。これからもずっと一緒にいたい」
その言葉に、美咲は思わず涙を浮かべる。
しかし、素直になることで、ケンタは自分の弱さや恥ずかしい一面もバレてしまったと感じていた。
「やっぱり、素直になるのは恥ずかしいな」と呟くケンタに、美咲は優しく微笑む。
「素直なケンタ君も、素直になれないケンタ君も、私は両方好きよ」。
エイプリルフールが終わり、ケンタは再びクールな素顔に戻った。
しかし、美咲との "素直デート" で感じた素直になることの喜びと恥ずかしさは、ケンタの心に強く刻み込まれていた。
素直になれない自分も、素直になりたいと願う自分も、両方が自分らしさだと気づいたのだ。
これからも、素直になれない日々が続くだろう。
でも、時々は素直になる勇気を持とうと、ケンタは心に誓うのだった。