田沼は国語を教えていた。
 国語では漢字の小テストを毎日していた。阿部ゆうなは、漢字ができなかった。それでとうとう田沼に職員室に呼び出された。
 職員室。
 田沼のデスクに田沼が座っていた。阿部ゆうなが立っている。
 「おい、ゆうな」
 (ゆうなっていうなよ)
 「は、はい?」
 「お前、漢字の小テスト、いっつも赤点だ」
 「あ、はあ」
 ゆうなは片手を後頭部にやった。
 「それでだ、ノート一冊漢字の書き取りしてこい」
 「えええええええええええええ」
 「わかったら、行け」
 「あ、はいはい」
 「なんだ、その口の利き方は。失礼します、だろ」
 「あ、はいこれは失礼しました」
 田沼は噴出した。
 (むかつくなあ。何が面白いのよ)ゆうな。
 「芸人かお前は。失礼します、だろ」
 「あ、はい。失礼します」
 「うん」
 と、田沼。
 ゆうなは退出した。
 廊下。
 「ち、むかつくなあ。何が芸人よ、ヤンキー」
 ゆうなは独り言ちた。
 そこには友達の橋本ここながいた。
 「どうだった」
 「さいあくー、ノート一冊漢字の書き取りだってえ」
 「ええええええええ。最悪じゃあん」
 「あのヤンキー、むかつくよお」
 「ほんと、田沼の野郎はあ、あんなヤンキーに決定え」
 ゆうなは笑った。
 「あんなヤンキー」
 二人は廊下を歩いていった。