猫かぶりでも、 きみが好き。




その言葉に、足が止まってしまった。





夏休みも目の前に迫って来た7月。

外のグラウンドから聞こえる部活生の声。

2人きりの教室に響くセミの鳴き声。


後ろにいるのは隣の席でメガネ男子の佐富(さとみ)だ。

そんな彼の方を向く勇気は私には無い。



そして今さっき、彼は。


『好きだよ、猫田(ねこた)さん』


私に告白をしたのだ。



「あのね、佐富」


セミの声を遮って私は口を開いた。


「私、ぶりっ子なんだよ」


学年に一人はいる女の子。

異性に媚を売って、モテようとする。

可愛く、あざとく、小悪魔のように微笑んで猫をかぶる。

それが私だ。



「そんで同性にも異性にも、びみょーに好かれない」


同性からは『媚を売っている』と当たり前のように嫌われて。

異性からも『ぶりっ子だ』と好かれない。


それでも学校というステージで輝こうとするキャラクターだ。


「私、嫌われ者なんだよ?」


くるりと後ろにいる彼の方を振り向く。

少し首を傾げてあざとく微笑むが、無反応。

メガネ越しからじっと私の方を見つめていた。


「…嫌われるの、しんどくないの?」