「ば、ちっげぇーよ!落とし物届けただけ!」



少し離れたところでゲラゲラと笑っている男子の軍団に“純”と呼ばれた男の子が顔を真っ赤にして叫んでいた。


私の視線に気づいた彼は、気まずそうにぺこりと一礼をして行ってしまった。



そんな彼と、もう一度会ったのはその日の昼休み。



詩春(しはる)ちゃん、席借りるね」


「あ、うん、全然使っていいよ」



隅っこで席を四つくっつけながらふわりと優しく笑ったクラスメイトの(らん)ちゃんに、私もにこやかに返事をしながら購買に行こうと教室を出る。


…と、ちょうど入ってこようとしていた男子生徒と思いっきりぶつかってしまい、小柄な私はその場に尻もちをついて転んでしまった。



「うわ、すんません!」



慌てたような声に顔を上げる前に、ぐいっと力強く腕を引っ張り上げられ朝の男の子と至近距離で目が合う。