あたしが好きになったのは新選組の素直になれない人でした




「はぁ…もういいから仕事をしろ仕事を。確か平助と左之助は午後から見回りだっただろ」

呆れ顔の土方さんはすぐに気持ちを入れ替えて、二人にそう言った。

「そうなんだよ土方さん!だから見回りの時間になる前に皆で昼餉を食べようと思ってきたのも理由の一つだぜ」

ニコニコとさっきから愛想を振りまいているが、何がそんなに楽しいんだろうか。
皆、原田さんのそんな顔を見ると何に対して怒っていたのか分からなと言うような顔になっている。それを見ると、この新選組にはこんな人がなくてはならない存在なのだと思わせてくれる。

それと、ここに来た理由は一つだけじゃなかったみたいだ。
それならそうと、早く言ってくれればいいだろうに、藤堂さんは意外と間抜けなのかもしれない。それか、もしかしたら土方さんが怖くて言えなかったとか。まぁもうそんな事どうでもいいか。

「…そんなの勝手に食べればいいだろ」

なんでわざわざくんだよと面倒くさそうにしている土方さんだが、妙に嬉しそうにしているその表情を空蒼は見逃さなかった。

(…素直じゃないんだから)

そんなだから、嫌われたくない人に勘違いされるのだ。
本当はそんな関係望んでないくせに。

(ま、そんな事絶対に言ってやらないけど)

「え?だって皆で食べた方が飯がもっと美味くなるだろ?」

何がそんなにおかしいんだ?と言いながら、首を傾げる原田さん。
土方さんはそんな事を言われるとは思っていなかったのか、少し眉毛が動く。

「今回ばかりは左之の言う通りだな、土方さん」

 にやっとそう言いながら、永倉さんは土方さんに歩み寄り彼の肩に腕を回した。

「…っおい!何しやがんだ新八!」

肩に腕を回された事に抵抗しながら、永倉さんの身体を引き離そうとぐいぐいと押し出す。
そんな光景を温かい目で見守る近藤さん。まるでその眼差しは父そのものだ。

「いいじゃねぇか、なぁ近藤さん?」

暴れている土方さんの肩に腕を回しながら、近藤さんを味方に入れようとしている永倉さん。
その判断はとても正しいなと空蒼は納得する。
土方さんは近藤さんの決めたことにはあまり口を出さない。危ないことや近藤さんが不利になりそうな話題以外には。

「ははははは!そうだな新八、皆で食べる飯はより美味く感じるのは確かだ。丁度皆が集まっているんだし皆で一緒に食べよう…なぁトシ?」

永倉さんの振りに丁寧に答えた後、土方さんに笑顔で問いかける。
そう言われた土方さんははぁとため息を付いていた。
どうやら観念したようで、やっぱり近藤さんには頭が上がらないみたい。

「…好きにしろ」

そう言いながら、頭をガシガシと掻く。
結局は近藤さんの言葉に同意したように見える光景だが、本当に嫌なら今すぐにでも適当な理由を言って部屋を出て行くはずだ、自分でもそうすると思う。でもそうしない事から土方さんはきっとただの鬼副長なんかじゃない、優しさを持っている鬼副長だ…そうであってほしいと心の底から思った。