あたしが好きになったのは新選組の素直になれない人でした




「お前らは何しに来たんだよ」

廊下に立っている三人を見つめていたら、隣からそんな声が聞こえてきた。
隣を見てみると、呆れた顔をしている土方さんがいた。

「いやーそれがさ?平助が近藤さんが土方さんに怒ってるって言ってたから見に来たんだ」
「ちょっ…左之助変な事言うな!」

原田さんの素直なチクリに藤堂さんはあたふたしている。

さっき話した時の藤堂さんの印象は、遊び心を持った真面目で勇猛な少年に見えたが、原田さんと永倉さんの隣にいる彼は普通のやんちゃな少年にしか見えない。二人の兄に囲まれているって感じだ。
意外と可愛いところがあるみたいだ。

「あぁ?変な事って…俺は平助が言ってた事をそのまま…」
「もういいから黙って!」
「むぐっ」

これ以上何も言わせない為なのか、それとも聞かせない為なのか、焦った藤堂さんは原田さんの口元を両手で覆った。
口元を覆われてしまった原田さんは、んーんー!と言いながらジタバタしている。

原田さんの性格からして、嘘を付く事は決してないだろう。嘘を付くのが嫌いなのか、それともただ単に単純なのかは分からないが、一言で表すなら素直と言う言葉がよく似合う。
それを、空蒼よりも長く一緒に居る藤堂さんが知らない訳ではないだろうに、素直な彼に言ったのもそうだが、連れてきたのがそもそもの間違いだったと空蒼は思う。

「…ほお?平助、お前が出て行ったのはそれを左之助達に言う為だったんだな?」
「っ……!!」

機嫌が悪そうな声のトーンで土方さんが話しかける。

(…どんなに原田さんの口を覆うが、原田さんを連れてきた時点でおしまいだよ。残念藤堂さん)

土方さんの方を恐る恐る振り返った藤堂さんは、もう言い逃れは出来ないと思ったのか原田さんの口元から両手を離した。

「…っぷはっ!!あ~死ぬかと思ったぜ!」

息が苦しかったのか、開口一番そう言った。
それなのに、顔色一つ変えずにニコニコしている原田さんはきっと只者じゃない。もしかしてМなのか?と疑うほど何事も無かったかのように、ニコニコしている。

「平助、言い逃れは出来ねぇから素直に謝っとけ」

ぽんぽんと藤堂さんの背中を叩きながら笑顔でそう促す永倉さんと、「何で土方さんに謝るんだ?」と今のこの状況が読めていない原田さん。

「あぁうん…そうだね…土方さん何かすみません」

しょぼくれた感じで藤堂さんは土方さんに謝った。
案外、藤堂さんも素直な人なのかもしれない。
自分が悪いと思ったらちゃんと謝ることのできる人は偉い。だって、ここに約一名自分が悪いのに謝ることも出来ない人がいるから、尚更そう思う。