「…そ、そうだよな!すまんすまん、ただ言ってみただけだ」
そう言いながら、凄く焦った顔をしている近藤さん。
「そうか?ならいいんだ」
土方さんは近藤さんの言葉に満足したのか、表情が柔らかくなっているように見える。
(…本当にただ言っただけ?あたしには何故かその言動が意味のある様な気がしてならないんだけど…)
さっきまでのどんよりとした雰囲気はどこへやら、二人からは温かな和やかなムードが感じられた。
そんな光景を見て、自然と口元が緩む。
「お?なんだ、怒ってないじゃん近藤さん」
「え?そんなはずは……あれ?本当だ…」
すると急に、廊下から聞いた事のある数人の話し声が聞こえてきた。
声の聞こえた方に顔を向けると、そこにはげらげら笑った原田さんに、原田さんの後ろからこちらの様子を伺いながら覗いている藤堂さんの姿があった。
「おい二人共!待ってろって言っただろ!」
その二人の後ろからは、大きな声を上げて走ってきた永倉さん。
どうやら置いて行かれたみたいだ。
「だって新八、厠遅いんだもん」
不機嫌な永倉さんに、もんとか可愛い事を言いながら言い訳を口にする原田さん。
「もんとか気持ち悪いんだよ佐之」
うげぇと顔を歪めてそう言う永倉さん。
それに隣からは土方さんのため息が聞こえる。
「俺の可愛さに気付かないのは新八だけだぞ!」
自信満々に言う原田さんのその言葉に呆れている永倉さんがいた。
微笑ましいなと思いながら見つめていたら、原田さんの後に隠れている藤堂さんと目が合った。
「っ……!」
「……。」
空蒼の姿を捉えた瞬間、サッと原田さんの後ろに隠れる。
(……。)
「おぉ?どうしたんだよ平助、俺の後ろに隠れて」
「い、いや…なんでもない」
原田さんに指摘をされながらも、空蒼の顔色を伺ってかなかなか後ろから出てこない。
(…あたしを裏切った事に後悔でもするんだな)
そう思いながら空蒼は廊下に立つ三人を見つめる。
そう言えば、こうやって三人が揃ったところを見たのは初めてだなと心の中で思う。
楽しそうに話している姿を見ると、この先新選組が無くなるのは嘘なのではないのかとさえ思ってしまう。
この三人はこの先、それぞれ違う人生を歩むことになる。
藤堂さんは新選組を離れ、後に結成される御陵衛士として歩むことになる。
原田さんと永倉さんは新選組を離脱し、旧幕府軍に属する組織、靖共隊を結成して活躍することになる。
今はまだそんな感じではないにしろこれから先で必ず起こる未来。
そんな未来が来なければいいなと、ずっとこんな日常が続けばいいなと、勝手ながら思ってしまう。
