あたしが好きになったのは新選組の素直になれない人でした




「冗談なんかじゃない、事実だ」

真剣な眼差しで空蒼の目を見つめながらそう訴えてくる。

「っ……」

近藤さんが嘘を付くことはないと嫌でも分かる。
それなのにそれを否定したい自分がいる。

「じ、じゃあどうして…どうして彼は物置小屋に行けだの、飯は無いだの、冷たく言ってきたんですか?」

あの時の雰囲気は今でも嫌だと感じるくらい本物だった。
あの冷めた目に低くて感情の無い言葉、あれを演技だったとでもいうのか?

「…トシは……」

言葉に詰まる近藤さん。
言いたいのに言えない、そんな風に見えるのは気のせいだろうか。

「トシは…空蒼くんを物置小屋に行かせたことを後悔している様に見えた…」
「後悔している様に…見えた?」

どうしてそこを「後悔していた」ではなく、「後悔している様に見えた」と表現するのだろう。
信じてほしかったら、そこは断言しなければいけないのではないだろうか。

「あいつは…新選組副長土方歳三だ…どんなに自分の判断で起きた出来事に後悔していようと、新選組副長である限り…それを言葉にすることは許されない」

――ドクンッ

「……。」

その言葉を聞いて心臓が大きく脈打った。
許されない立場に土方歳三という人物は生きている。例え自分の感情を推し殺すことになろうとも、彼はきっとその場に居続けるだろう。

「そして、私が新選組局長近藤勇であり続ける限り、あいつも…新選組副長土方歳三だ。新選組副長でいる為に…新選組副長でいられる様に…あいつはこれからも己に厳しく、他人にも厳しい…己の気持ちを隠してまで新選組副長としてこれからも沢山、嫌われ役になっていくんだろうね」

そう語る近藤さんはとても悲しそうでどこか儚げに見えた。

新選組副長としての立場、役割。それがある限り土方さんは、鬼の副長として恐れられていくのだろうか。
空蒼には、その立場に居る人の責任や役割なんて分からない、分かりたくもない。けど、その鬼の副長と言われる土方さんの中にも、優しさがあることを空蒼は知っている。

あの時、空蒼に対して綺麗だと怒鳴ってくれた土方さんのその行動はきっと優しさからだと思うから。
それにさっきだって、「悪かった」と言ってくれた土方さんの言動もきっと優しさだ。その「悪かった」という言葉の中にどれだけの感情が込められているか考えもしなかった自分が情けない。
そして、さっきまで土方さんの優しさに否定していた自分にも腹が立つ。

そんな土方さんだから、皆にそして現代の人にも好かれているのかもしれないと空蒼は思った。
そしてそれを知ってしまった空蒼は、土方さんの事はあまりまだ知らないけど、嫌いにはなれないと自覚してしまった瞬間でもあった。