「お前が自分の事をなんと思っていようがそんなのどうでもいい!だが、皆が皆お前の目を嫌っているなんて思うな!」

「っ……」

空蒼の目を見つめながら土方さんは話をしてくれている。

思えば、土方さんも総司も近藤さんも、初めて会った時からちゃんと目を見て話してくれていた。
空蒼の目が他の人と違うと分かった後も、ちゃんと目を見てくれていた。

その事実に空蒼の目に涙が浮かぶ。

「…昔に何があったか知らねぇが、ここにはお前のその目を綺麗だと言う人がいる…それだけは覚えとけ」
「………。」

その言葉に目を見開く。

それとほぼ同時、溜まっていた涙が目から零れ落ち、土方さんの手の上で止まった。

「〜〜そんなのっ、そんなのっ…言われた事ないからっ…」

涙がどんどん流れていく。

「どんな反応したらいいのか分からないだって?」

さっきよりも優しい口調にコクっと頷く。

「なら、また言われた時は素直にお礼でも言っとけ。そしてその目を持ってる事に誇りを持つんだ」
「…誇、り?」

空蒼の頬を挟んだままそう言ってくる土方さん。
でもその目はちゃんと空蒼の目を捉えている。

「あぁ。黒目が多い中で、そんな綺麗な色をした目を持ってるんだ。それだけで誇りに思うのに十分だろ?」
「……。」

涙で視界がぼやける中、土方さんが優しい表情をしているのが分かる。
そして涙を流す空蒼の涙を土方さんか拭ってくれている。

「…誇りを…こんな目を持ってるのにっ…誇りに思っても、いいのか?」

ずびっと鼻をすすりながら土方さんに問いかける。

(あたしがそんな事を思ってもいいの?誇りを持って生きてもいいの?)

「あぁ良いんだ、沢山誇っておけ。その目を持って生まれて来た事に感謝するくらいにな」

土方さんの言葉がぽっかり空いた心にストンと落ちていくのがわかる。今まで大きくなっていた心の穴を、土方さんのその言葉で埋め尽くされていく。

「だからもうお前は、その前髪や被り物で目を隠さなくて良いんだ。自信を持て、堂々としていろ…いつかそれがお前の生きる理由の一つになる。きっとな」

「っ…」

"生きる意味"

どうしてあたしは生まれてきたんだろうと何回思ってきただろうか。
それなのにこの目が生きる意味になる?
そうだったらいいなと思ってしまうのはきっと、目の前にいる土方さんのお陰なんだろう。

土方さんにそう言われると、髪を伸ばしたりフードを被って目を隠していたのがバカバカしく思えてきた。
もうその必要はないんだと言ってくれる土方さんのその言葉がとても嬉しくてたまらない。

空蒼は涙を流しながら言った。

「そう…なんだ…」

――フラッ

「っ…おい!」

視界が傾く。

(…あれ?身体が…言う事を、聞かない…)

「おい!朔雷!」

土方さんの言葉を最後に意識を失った。