あたしが好きになったのは新選組の素直になれない人でした





後悔するといつも悲しくなる。
気持ちが沈むだけではなく、集中するのも億劫になる。そんな後悔を何故誇りに思うだって?

空蒼はふいっと近藤さんから視線を逸らした。

(…あたしには分からない……後悔を誇りに思うなんて…後悔はいつも悲しみでしかなかったから…)

後悔をそんな風に考えた事がなかった。
まるで後悔をする事が当たり前みたいなそんな風に聞こえてならない。
近藤さんはきっと、後悔する事になんの躊躇いもないんだろう。空蒼のようなこんな臆病者と全然違う。

「…空蒼くんもきっと、自分の思う後悔に出会える日がくるよ」
「……。」

俯いたまま空蒼は何も言えない。

近藤さんは強い。いや強いだけじゃない、その強さの中に優しさがある。人の強さは優しさに比例する。
一体どれだけの覚悟で京まで来たのだろうか。

「私からも一つ、質問してもいいかい?」

俯いていると横からそう言われた。

「……どうぞ」

小さい声でそう答える。
自分だけ聞いといて答えないは、流石に悪いと思うので、嫌だなと思っても頷くしかない。

「空蒼くんは……顔を見られるのが嫌なのかい?」
「っ……」

その言葉に身体がビクッと反応し、落ち着いていた心臓の脈がみるみるうちに早くなる。
それとほぼ同時にフードを握りしめる。
でも、触れて欲しくなかった話題を振られたのにも関わらず、嫌な気は一切ない。

(なんでだろう…昼間、土方さんに目について聞かれた時は凄い嫌だったのに…近藤さんが優しいから?)

その落ち着いた声を聞いていると不思議と安心するのも気になる。まるで父親の様な存在みたいだ。

「あ…言いたくないなら無理して言わなくていいからな?無理強いはしないよ」
「……。」

無理強いはしない。
その言葉、昼間に聞いた気がする。

(…理由を聞いたら、あたしを嫌いになってくれるかな?)

今は優しい近藤さんも目を見たら、理由を聞いたら、きっと態度を変えるはず。それに仲良くする気はない。
その気持ちは今でも変わらない。

すぅはぁと深呼吸をした後、覚悟を決めて口を開いた。

「…この目は…他の人とは違うんです」

行灯を見つめながらぽつりと呟いた。

「…目?」

空蒼の言葉がよく分かっていないのか聞き返してきた。

(…土方さん、あたしの目の事近藤さんに言ってないの?)

てっきり伝えていると思っていたのだがそうでもないらしい。怪しい人の事ならなんでも言いそうな土方さんが、どうして言わなかったのだろう。

「……聞いてないんですか」
「…ん?あぁトシからか?そりゃ聞いてないぞ」
「……なんで」

(なんで聞かないの?)

あの部屋の中で一人、おかしなものを頭に被っていたら気にならないはずがない。
どうしてこんなものを被っているのか、そう聞かないわけがない。