あたしが好きになったのは新選組の素直になれない人でした




――コンコンコン

静寂の中に扉を叩く音がした。

「…んぅ……」

その音に反応した空蒼は顔を上げる。

「暗い…」

いつの間に寝ていたのだろう、目を開けるとそこには暗闇が待っていた。
申し訳程度に窓から差し込む月明かり以外には、何も照らしてくれるものはない。

硬い木の板の上に座っていたので、お尻と身体が痛い。
身体を曲げると、ボキボキッと鈍い音がした。

(…今何時だろう。)

現代みたいに時計はまだそんなに普及していない。
懐中時計はもうそろそろ輸入してくると思うが、昔の人はだいたい鐘の音や、太陽や星の位置などで時間を把握していたらしい。
だがここから外は見えないし、懐中時計もないので、空蒼は何かヒントになるものはないか、小屋の中をきょろきょろ見渡してみる。

だが、目に映るものは漆黒の闇。
空蒼は諦めて、そう言えばさっき物音がしたなと思い出す。

――コンコンコン

「……?」

やっぱり音がした。

(…誰だ?)

空蒼はゆっくりと立ち上がり、扉の前で足を止める。

「……はい」

ノックされたからには一応返事をしてみる。

「…空蒼くんかい?夕餉を持ってきたんだが、食べないか?」
「……。」

先程聞いたであろう声が扉の向こうから聞こえてきた。

(…夕餉?)

土方さんに断られたのにも関わらず、どうしてそんな事を言うんだろう?
それともそれで注意を引きたいんだろうか。

「…空蒼くん?」

空蒼が何も答えないので今度は名前を呼んできた。
はぁとため息をついて口を開いた。

「……いりません」

冷めた口調でそう一言言い放った。

食べさせてくれるんだ、と思わせるような事を言っておきながら、あんな睨み付けるようなドスの効いた声で却下されたのに今更何?
本当に持ってきてくれてたとしても、今更食べたいとは思わない。

「……お腹空いてるんだろう?少しくらい食べないと…」

言いにくそうにそう言う彼に胸が痛む。

土方さんなら何も思わず拒否できるのに、この人にここまで言われたら何も言えない。
別にこの人は何も悪くないんだから。それに心優しいこの人に迷惑はかけられない。

空蒼はゆっくりと口を開いた。

「……開けて下さい」

食べるとは言わず、違う言葉で返事をした。

「あぁ…今開ける」

そう言うと、ガチャという音が小屋中に響き、ガラガラガラッと扉が開かれた。