「っ……」
目はぎりぎり隠れるか隠れないか、それともフードの影のお陰で目の色までは認識出来ないだろう。
一応空蒼からは、それぞれの顔は確認できる。
空蒼のいた時代で見たことのある人が、土方さんを除いて一人。
現代では見た事は無いけど、さっきまで一緒にいた総司と、その隣にいる見た事のない人が一人。
そして空蒼を入れて、計五人がこの部屋に集まっていた。
「では早速だがトシ、色々と訳を話してほしい」
空蒼から見て右側、誕生日席に座っている人が話を切り出した。
見た事のあるその顔。
顔がゴツゴツしており、少しゴリラ顔と言った方がいいだろうか。
言い伝えられている武勇伝の一つとしては、握りこぶしを口の中に入れられるという話が伝わっている。
そしてその中に優しさが滲み出ているのは気の所為だろうか。
「あぁ…実は…」
空蒼の目の前に座っている土方さんは、ぽつりぽつりと先程あった出来事を話し出した。分かりやすく簡潔に。
それを見て空蒼は、土方さんってやっぱり頭のキレる人物なんだなと感心した。
だが、一つ気になった事がある。
土方さんは途中からあの茶屋に来たと言うのに、どうして土方さんが居なかった時の状況を説明出来るんだ?
もしかして最初からその場にいたとか?聞くつもりは無いが気にはなる。
「ほう…朔雷空蒼……それはまた珍しい名前だな?」
一通り話終わり、近藤さんがそう言ってきた。
ニカッと微笑みながらそう言ってくれるのはゴリラ顔の人…いや新選組局長 近藤勇だ。
自己紹介されなくてもすぐに分かるその面影。
写真てやっぱり大事だなと空蒼は思う。
「敵を倒したと言う事は、君は体術でも習っているのですか?刀を持っている訳では無いみたいなので…」
少しくせっ毛のある茶色に近い短い髪に、頭の上で髷を申し訳なさそうに結っている、優しそうな男性。
空蒼から見て、目の前の土方さんの左側に総司、その左の顔の見た事がない人物がそう聞いてきた。
でも先程の総司の言葉からすると、消去法でこの人があの山南敬助と言うことになるんだろう。
「違いますよう山南先生〜、俺が見た時一人の男が倒れてたって言ったじゃないですか?その男の横に竹箒が転がっていたので、多分それで気絶させたんだと思いますよ〜」
ニコニコしながら山南先生にそう言う総司。
それにしてもあの状況でそこまで頭が回っていたとは、流石新選組一番隊組長だ。あたしに聞きもしないでそこまで見抜くとは洞察力が優れている証拠。
「竹箒…では剣の腕に覚えがあるんですね」
真っ直ぐと空蒼に向かって山南さんが聞いてくる。
「……。」
剣に覚えとはそんなのある訳が無い。
目立たないように一人で過ごす事に慣れている空蒼が、剣道なんてしてくるはずがない。それどころか部活にすら入っていなかったのだ、ありえない。
でもそんな事知る由もないここにいる人達に、そこまで言う必要はないだろう。
「どうなんだ」
空蒼が何も答えないので、目の前にいる土方さんが睨むようにして話しかけてきた。
「…さぁ」
空蒼のその受け答えに土方さんの眉がピクリと動いた。
答える義理はない。間者だと思いたいならそう思えばいい。
空蒼は貴方達と仲良くする気は毛頭ないのだから。
早く、早くここを離れて、どうするか考えなければ。
いやその前に腹ごしらえと寝床だ。
(そのためにここに来たんだからそれくらいは大丈夫だよね?)
