あたしが好きになったのは新選組の素直になれない人でした






「お前……」
「土方さーん!!」

土方さんが何か話そうとした瞬間、総司の呼び声に遮られた。

「……ちっ、遅ぇんだよ」

空蒼の事をチラッと見たかと思えば、総司の居るであろう方向に向かって悪態を付く。

――ドスドスドスドスッ

早歩きなのか足音がやけに大きく聞こえた。

「少し遅くなりました〜」

少しという部分を強調しながらそう話す総司。
空蒼はその言葉に入口に目線をやる。

「遅せぇ」

そんなに待っていないはずなのに、土方さんは文句が多いらしい。

「そんな事より聞いて下さいよう!近藤先生と山南先生は直ぐに見つけられたのに、あの三馬鹿衆は出払ってるみたいなんですよー」

見なくても不貞腐れていると分かるその口調にツッコミどころ満載だ。きっと見つけられなかった事に不満があるんだろう。

「あ?…あぁ…そういやあいつら今日非番だったな…こんな時に…」

そう言いながら、頭をがしがしと乱暴にかく土方さん。
空蒼と言う存在が急に現れたから、土方さんは仕事が増えて嫌なんだろう。

(なら、どうしてその場であたしを殺さなかった?それか置き去りにでもすれば良かったのに。そんなに嫌そうな顔をするなら放って置けばいい)

「はぁ…呼びに言ってる時間もねぇし、とりあえず俺らだけで話をする…入ってくれ」

――ドクンッ

土方さんのその言葉に心臓が暴れ出す。
さっき総司が近藤先生と山南先生と言っていた。
この襖の向こうに二人が居ると思うと緊張で手が汗ばむ。

空蒼は咄嗟に俯いた。

「……ん?トシ…この不思議な服装をした人は誰だ?」

足音が近付いたと思ったら、空蒼の目の前でそんな声が聞こえてきた。

(……トシ…って呼ぶ人物は一人しかいない…)

早まる鼓動を抑えながら、何とか気持ちを落ち着かせる。

「あぁ…これから話す。とりあえず座ってくれ」

ザッザッと、着物の擦れる音がこの部屋に響き渡る。静かなので余計にその音が大きく聞こえた。

俯いているからよく分からないが、空蒼から見て右の言うなれば誕生日席と呼ばれる所に一人、空蒼の目の前に三人、腰を下ろしたみたいだ。

緊張と不安で顔をあげられない。

「…おい、顔ぐらいは上げろ」
「……。」

ごもっともである。
ただでさえフードを被っているのに、俯いたままでは流石に申し訳ない。
それに話す時に下を向くなんてありえない。

空蒼は土方さんのその言葉に、ゆっくりと顔を上げた。