あたしが好きになったのは新選組の素直になれない人でした




ボトッ

「……あ」
「あ?」
「…?」

乱れた着物を片手で直していたら、懐から何かが落ちた。
空蒼のその言葉に反応して、落ちたそれを拾ったのは総司だった。

「っ…これって…」

目線の高さに持ってきてそれを凝視しながら勘づいた表情を浮かべる総司。流石だ、甘味の事になると中身を見なくても分かるらしい。
だが、実際は薄っすらと色が見えているのでそれで分かったのかもしれない。

「何だ?」

土方さんは総司の持っているモノを見て首を傾げている。
甘味の似合わない土方さんには分からないようだ。

空蒼は丁度いいと考える、元々総司に渡すものだったのだから。

「…こんな形で渡すのも変ですけど、それ沖田さんに渡したかったんです」
「へ…俺に、ですか?」

そう言われると思っていなかったのか、気の抜けた返事をする総司。
なんで自分にくれるのか分かっていない様子だ。
なので空蒼はニコリと微笑みながら口を開いた。

「…せめてもの、お詫びの品です」
「っ……!!」

目を大きく見開く総司。
そう、これは空蒼が出来る数少ない総司に対してのお詫びの証。
これでチャラになるとは思っていないけれど、少しでもこの気持ちが伝わってほしいと願う。
土方さんはそれを見て何か分かったのか「ほう」と一言呟いた。

「…近藤さんに渡すはずだった金平糖の代わりになるとは思ってないですが、せめてもの謝罪の証です…本当にすみませんでした」

総司の目を見て謝った後、座ったままぺこりと頭を下げた。
今ならこの左腕の痛みすらもどうって事ないように思えてくる。総司にこの思いが伝わるのなら何だって出来る気がした。

「なっ…朔雷さんは謝らないで下さいよう!あれは俺の勘違いで…」
「…勘違い?」

総司の言葉に顔を上げる。
勘違いとはどういう事だろうか。

「えーとその…あの時は色々と気持ちが不安定で…いつもなら笑って過ごせる出来事にもついカッとなってしまいました……あの後、朔雷さんが居なくなったと聞いて目が覚めました…色々と。聞けば朔雷さんが持っていた金平糖は元々平助が俺の所から持ってきたものだったんですよね…その、聞きもせず勝手に朔雷さんのせいにしてすみませんでした」
「……。」

総司の何が凄いかってこうやって自分が悪いと思ったことを素直に謝れるところだと思う。
総司は申し訳なさそうに砂利の上で正座して項垂れて座っていた。
そういや、土方さんも一度だけ謝ってきた事がある。
ただでさえ、大人になると謝ると言うのを素直に出来ない人が多いのに、この人達はちゃんと謝ってきた。素直すぎる。

空蒼は二人を交互に見つめる。
こう見えて素直な人達なのかもしれない。

「……いえ、藤堂さんが沖田さんのだと言っていたにも関わらず貰った俺の自業自得です」
「…朔雷さんは大人ですね」
「そんな事ないですよ」

驚いた表情をしながら総司にそう言われた。
見た目が大人でも心は全然大人になれていない。

「平助はちゃんと絞めておきましたので、安心して下さい」
「?はい」

何に安心すればいいのか分からないが、とりあえず頷いておこう。

「…仲直り出来たな」
「そうですね」
「え…?」

一段落したところで、今まで黙って聞いていた土方さんが口を開いてきた。
土方さんに視線を向けると、砂利の上だと言うのに胡座をかいている。総司も正座をしていて驚いたのに、土方さんまで胡座とは痛くないのだろうか。

空蒼はと言うと、お尻は少し痛いが体育座りをしていた。
正座や胡座よりかはマシだろう。