「ふぅ…」
我慢していたモノを全て吐き出したことにより、とてもすっきりした表情を浮かべる空蒼。
口元を軽く拭い、前に向き直った。
「さっ朔雷さん!!」
「げっ…」
総司の目には涙が浮かんでいた。今にも零れ落ちそうな雫が目に浮かび上がっている。
隣にいる土方さんは刀に付いている血を和紙で拭きながらため息を付いていた。
「…あの……痛っ…」
左腕に力を入れた瞬間激痛が走った。
そちらに目をやると痛そうなくらい血が羽織に滲んでいる。
(…気持ち悪さで怪我していた事さえ忘れてたよ……)
もう片方の手で斬られた傷の下を抑える。
なぜか斬られた時よりかは痛くない。もしかしたら斬られた部分が麻痺してきていて痛さに鈍くなっているようだ。
「朔雷さん!!早くその腕を手当てしないとっ!」
気が動転しているのか先ほどから凄く慌てている。
斬られた張本人よりそれってどうだろう。逆に清々しく感じる。
「おい、とりあえずこれで止血するから腕を出せ」
懐に忍ばせていたのか、土方さんは白い手拭いを手に持ってそう言ってきた。
総司とは逆にこういう時でも土方さんは落ち着いているらしい。流石としか言いようがない。
こういう人間だから皆付いていこうと思ったのかもしれない。
そう思いながら、空蒼は言われた通りに腕を土方さんの前に突き出す。
「痛っ…」
「我慢しろ」
「……。」
少し動くかすだけで痛い所を見ると、完治するのか否めない。
医学の発達していた現代に慣れているからか、ここでの治療法が全然見えてこない。
そう考えている間にも土方さんは慣れた手つきで手拭いを巻いていく。
(上手い…こういう仕事をしている分嫌でも慣れていくんだろうな…)
土方さん達からしたら怪我なんて日常茶飯事なのだろう。
子供の頃は空蒼でも怪我はしていたが、大人になると頻度が減ってくる。しまいには紙で指を切っただけでも大げさに絆創膏を貼る人もいるくらいだ。現代では大人になるにつれ怪我は減るが、逆にこの時代では大人になるにつれ怪我が増えていくのだろう。そんな事新選組に会わなければ考えもしなかった事だった。
同じ日本でも全然違うのだ。
「…あくまで応急処置だからな、帰ったらちゃんと見てもらう」
「…ありがとうございます」
腕を見ると手拭いが綺麗に巻かれていた。
それのお陰か幾分痛さが和らいだ気がした。
「本当にすみませんでした…俺を庇ったせいでこんな傷を…」
「いえ…沖田さんが無事で良かったです」
後悔なんてしていない。むしろ怪我したのが総司じゃなくて良かったと思っている。
もし総司が怪我をしていたら空蒼は後悔していただろう。
「っ……あんな酷い事言ったのにも関わらず、俺の心配をしてくれるのですか?」
「えっと…何を言っているのか分からないですが、傷も対して深くないですしもう謝罪は結構ですよ」
「朔雷さん……」
大丈夫だって言っているのにどうして涙が溢れているんだろう。
それに、酷い事って言っているがあれは全て自分が招いた事だ、総司が謝る必要はない。
総司の大切な金平糖を貰ったのも、それを少し食べたのも空蒼が悪い。謝罪をしなければいけないのはこっちの方だ。
