あたしが好きになったのは新選組の素直になれない人でした




砂利の上で、震えている足を立たせることができずにいる空蒼の目の前に、守るようにしてその大きな背中が安心感を与えてくれている。
どうして彼がここにいるのだろう。どうして守る様な行動をとっているのだろう。
空蒼の頭にはそんな言葉が飛び交っている。

「正気か?こいつを食べたって美味しくないだろ」

安心感は気のせいだったみたいだ。
今すぐにでも彼の口を縫い付けてやりたい。

「お前には関係ないって言ってるだろ、そこをどけ」
「だーかーらー…はぁ…こいつは男だ、目を覚ませ。お前の腕を振りほどけなかった軟弱者だ」

(…言わせておけば…言いたい放題言いやがって…)

空蒼は土方さんを睨みつける。
この足が今すぐにでも動くものなら彼の口を縫い付けてやれるのに。

「それに……こいつは”俺らの仲間”だ、関係無いとは言わせない」
「っ……!」

空蒼の眉毛がピクりと動いた。
何を言い出すかと思えば何を言っているのだろうか。
仲間なんて笑わせてくれる、仲間と言えるほど親密になった覚えはない。まして、こうやって迷惑かけている奴が仲間だなんて絶対に認めない。

「…仲間じゃないです」

新選組の仲間になれるほど、空蒼は強くない。
その瞬間を今さっき嫌というほど思い知らされた。
こんな弱い奴新選組になんて必要ない。総司に言われた言葉を今になって自分で納得してしまう。

「ほう?仲間じゃないと言っているが?」
「お前……」

リーダー格の男が気持ち悪いニヤついた顔で土方さんを挑発する。
それに対し土方さんは何故か空蒼を睨んできた。眉間に皺を寄せて鬼の副長そのものだ。

「まあいい…新選組とはいつかやりあう運命なんだ、殺してやるよ」
「…後悔してもしらねぇぞ」

お互いそう言うと、腰に差している刀を鞘から抜いた。

(なっ…そんな事するほどじゃないでしょ!!)

空蒼は何とかその場から立ち上がり、土方さんに近付いていく。
こんなところで怪我でもしたらどうする気なんだ。こんなの史実にはない。
いや、空蒼が存在している時点で史実にはない事だ。その存在がなければこんな事にはならなかった。

「土方さん、それを鞘に収めて下さい」
「…あ?」

隣に来た空蒼を睨みつける土方さん。
凄い殺気だ。人間ってここまで殺気が出せるのかと感心してしまうほどに。

「刀を鞘に収めてと言ったんです。無駄な抜刀は控えて下さい」

だがめげない。
こんな状況空蒼は望んでいない。
こんなところで怪我されてみろ、空蒼は一生後悔するだろう。