あたしが好きになったのは新選組の素直になれない人でした




「っ…!!」

眉毛の辺りで丁寧に切られた、くせ毛のない真っ直ぐな黒い髪。
今まで隠されていた金色と青色のオッドアイの瞳、その目を挟むようにして長いまつ毛が綺麗に生えていた。

「……。」

言葉が出てこない。
いつぶりだろう、自分の目をこんなに凝視したのは。いつだったか自分の顔を鏡で見なくなったのは。
いつの間にかそれが当たり前になっていた。

(…力強い眼差し…してるじゃん)

いつぶりかに見た自分の顔は、あの頃よりとても大人びて見えた。

(…あたしも成長したって事かな…色々と)

そう思いたい。
あの頃より強くなったとそう思いたい。

「…その方が良いよ空蒼」
「…え?」
「どうして前髪で目を隠してたのかは空蒼から言ってくれるまで聞くつもりはないけど、その方が私は良いと思う」
「…。」

真っ直ぐと見つめてくる楓。
どうしてだろう、初めて会った人にこんな風に言われたら前の自分ならきっと逆ギレしていた。
なのに、全然怒る気力すら湧かない。むしろそう言ってくれる楓に好感を持っている。
今までは自分の事で精一杯だったけど、その時より少しは周りをちゃんと見る事が出来てるって事なのかもしれない。

「それから…女性は笑顔でいなくっちゃ!経験上女性は笑顔で居た方が立場的に立ち回りやすいよ!」
「……男の格好をしている今のあたしからしたらそれはまずいと思う…」
「あ…そっか」
「ふっ…あはははは!!」

どうしよう、笑いが止まらない。
こんなにも笑う日がくるとは昔の空蒼からは想像が出来なかった。

「ちょっ、空蒼笑いすぎだって!」
「ご、ごめんっ…ぷっぷくくくっ」
「もう…」

少し不貞腐れている楓だが、顔はとても笑顔だった。
人と話すのがこんなにも楽しいとは思いもしなかった。
こんなにも楽しくて、嬉しい気持ちになるんだ。

「か、楓…あのさ…」
「ん?」

座布団の上で正座になり、楓の目を見つめる。
もしかしたら運命だったのかもしれない。

「えっと…あ、ありが、とう」

楓を助けたその時から出会う運命だったのかもしれない。
そしてこうやってまた再開するのも必然だったのかもしれない。

「…うん!」

楓の笑顔を見ると自然とこちらも頬が緩む。これが俗に言う友達というやつなのだろうか。
この目を気持ち悪がらずに笑顔を向けてくれた楓をこれからも大切にしていきたいと思った瞬間だった。

「で?新選組には戻るの?」
「え……?な…なんで…」
「不思議だよね…こうやってちゃんと話すの今日が初めてなのに…空蒼の事は何故だかよく分かるんだ。空蒼が分かりやすいからかな?」

そう言いながら、空蒼の座っている向かいに座った楓は、空になったお皿と湯呑をお盆に乗せて片付け始めた。
働き者だなと思いながら空蒼も一緒に片す。