あたしが好きになったのは新選組の素直になれない人でした




だが、この気持ちはわがままだ。
この気持ちのまま帰りたくないから総司と仲直りしたいって、そんなの総司の気持ちを無視してる。

(分かってる…あたしが弱いからその気持ちのまま帰りたくないなんて考えになるんだ…)

それでも…総司の気持ちを無視してでも、笑顔で総司とお話がしたい。冗談も言いたいし、一緒に土方さんの豊玉発句集をからかいたい。
例え、そこにいる事が許されないとしても、一度でいいから笑い合いたい。

(それが今の…あたしの気持ち…)

譲ることの出来ない気持ちができてしまった。

他人に対して興味の欠片もなかった空蒼が新選組の事になると気持ちが揺らいでしまっている。
好き、とはとても儚いものである。
一度でも好意を抱いてしまったら、無視する事など出来やしない。人間はその気持ちに対してとても貪欲だ。
空蒼も人間。その気持ちにとても戸惑っていた。

(……。)

目の前にある金平糖。
それで何か出来るとしたら一つしかない。代わりにはならないけれど、渡すのと渡さないのとじゃ雲泥の差がある。
また怒鳴られるかもしれない、こんなもの今更いらないと言われるかもしれない。
それに今度目の前に現れたら斬ると忠告もされている。

(でも…それでも…)

この気持ちが言う事を聞いてくれない。こんな気持ちは初めてだ。

「言わない後悔より言った後悔の方がずっとよくありませんか?」

その言葉に金平糖から如月さんに視線を移した。
揺るぎのないその目にとても固い意志が感じられた。

「……大人ですね」
「勿論大人ですよ、もう17歳ですからね」

ニコッと微笑む如月さん。
17歳は空蒼の時代ではまだ高校生、しかも空蒼と同い年らしい。
現代の高校生より全然大人だ。とても賢そうで落ち着いてて大人のお姉さんという感じで、自分とは比べ物にならない。

「…同じですね」
「えっ本当ですか!?わぁ嬉しい!この付近には同い年の女の子はいないからすごく嬉しい!」

空蒼が同意をしたらとても喜んでくれる如月さん。
今日一番の笑顔をしていると思う。
如月さんは笑うと可愛らしい顔つきになるらしい。

「なら敬語は無しだね!これからよろしく空蒼!」
「っ……!」

そう言うと如月さんは空蒼の両手を掴んで、大胆にぶんぶんと上下に揺らしながら握手らしきことをしてきた。
空蒼はそれを見てぽかんとする。
その行動にも驚いたがやはり一番は名前を呼ばれた事だろう。
人とできる限り関りを避けてきた空蒼は、母親以外で名前を呼ばれた事はない。せいぜい苗字止まりだった。
名前で呼ぶほどの関係を持ってこなかった空蒼にとってはそんな些細な事でさえ驚きなのだ。