「何言ってるんですか、朔雷さんの方が面白い方ではないですか」
「…え?」
「だって、女の私を女の貴方が助けたんですよ?面白いというかびっくりですよ」
確かに。
刀を持った相手に女性が挑もうなどと誰が思うだろうか。
ましてこの時代では尚更そう思うだろう、喧嘩や揉め事、刀同士の争いを止めるのは必ず男性の役割だ。
現代になって、警察には女性もいるのでそれについては何とも思っていなかったが、この時代でそれは絶対に有り得ない事。
如月さんがこう言うのも無理は無い。
「……えと、あの時はただ無我夢中で…女性が危ない目にあっているのに何もしないなんて出来ませんでした…まぁそれが男性なら自分もどんな行動に出たかは分かりませんけど」
その時はこの時代に来たばかりで、ここが何処なのか知りたくて助けたけど、それだけが理由で助ける事は出来なかったと思う。
きっと今言った事がもう一つの理由だ。ただ純粋にそう思った。
「それでも私は貴方に感謝してもしきれません…本当にありがとうございました」
そう言うとぺこりと頭を下げてきた。
律儀なのか親切なのかよく分からないが、さっき言ってくれたので何回も言う事ないのに。
「…もう十分お礼はされてますので、もう頭を下げないで下さい」
何回も言われるとこっちが縮こまってしまう。
言われ慣れていない言葉を言われるとどうしていいか分からない。
「…やっぱり朔雷さんは優しい人ですね」
顔を上げた如月さんにそう言われた。
「…優しくなんてありませんよ」
何時でも自分の事が最優先、自分の感情に振り回されるだけの自分の意思すらない弱い人間。
優しくもない、強くもない。人と関わりを持ってこなかったのがその証拠。
それに総司からも逃げてきた。自分のせいなのに問題解決すること無く、無理だと諦めて放置する。
そんな事しか空蒼には出来ない。臆病者だ。
――スっ
「…?」
いつの間に下を向いていたのだろうか。
空蒼の前に何かを置かれて顔を上げた。
「……っ」
「持って行って下さい」
「……。」
その言葉に如月さんを見る。
「…私が言える事ではありませんが、会えるうちに思っている事は口に出した方がすっきりする事もありますよ」
「……。」
ね?と言ってきた如月さんの表情はさっきと打って変わってどこか悲しそうだ。まるで如月さん本人に対して問いかけているように見えた。
そして空蒼の目の前には先程の金平糖が置いてある。
和紙に包まれていてもうっすらとその色が確認出来た。きっと如月さんは何となく気付いているんだ。この金平糖が空蒼にとってとても大事だと言う事に。
(会えるうちに…)
どうしてだろう。
元いた時代に帰ろうとも思わないが、もし何らかの理由で戻ってしまった時の事を考えてしまった。
もしこのまま彼と仲直り出来ないまま帰ってしまったら、きっと自分は後悔するとそう確信してしまった。
例えこの時代に来た事が必然だとしても、そう何回も必然が起こるはずはない。
この胸の違和感を抱えたまま帰るなんて出来ない、そう気付いてしまったらもう無視は出来ない。
初めてかもしれない、一度諦めてしまった事に再び挑もうと決心するのは。
もう無理だと、総司と仲直りするのは無理だと諦めていたのに、今は仲直りしないまま別れるのはとても嫌だと感じる。
