その日はあっという間にやってきて、
本当に結婚式を挙げるわけじゃないのに、
緊張は頂点に達した。

そういう場所を、交際相手…?婚約者…?と見学することへの憧れはもちろんあるけれど、
こんなに早くになんて想像もしていなかった。

「わーっ!四季くん、大きくなったわねぇ…小さい頃、よくおうちに遊びに行ってたのよ!まぁまぁまぁ…彼女ちゃん!?かーわいいー!」

四季ママの親友さんは、ママさんの親友だなって分かるハイテンションぶりで、私達を歓迎してくれた。

私と四季くんの他に四組のカップルが参加していた。

皆さん大人で、落ち着いた雰囲気の中で、四季くんまでもが落ち着き払っていて、
私だけが浮いている気がする。

一度に同じ場所を見学したらゆっくりできないからと、それぞれのカップルにひとりのスタッフさんが付いて、それぞれに見て回ることになった。

「最後はお食事をご用意しておりますので、皆さんでお召し上がりください」

親友さんがほがらかな笑顔で言った。

私と四季くんには親友さんが付いてくれた。

「ここが式を挙げるチャペルよ」

「うわぁ…写真や映像で見るのとは違う」

「どう違う?」

「なんていうか…目がくらみます。不思議な力っていうか…なにかに惹き寄せられてるみたい…」

「ふふ。立ってみる?」

親友さんが、見たことのある、新婦と新郎が誓いの言葉を交わす場所を指さした。

首を横に振った私に、四季くんが「いいの?」って聞いた。

「だってほんとに結婚するときじゃなきゃダメだよ」

「シュリちゃん、可愛いわね」

親友さんに肘で小突かれた四季くんは視線を逸らして、チャペルの天井を仰いだ。