「事情説明したら、頭打ってるから病院に行ってねって先生が言ってたよ」

「そんな大事には…」

「念の為だよ。あとから何かあっても大変だから。そんなことより…」



目にうっすら涙を浮かべながら真緒ちゃんはものすごい勢いで頭を下げた。



「えっ、え?真緒ちゃん?」

「ごめんなさいっ。もしかしたら何かあるかもって分かってたのに、すぐ助けられなくてっ…」



そんな、真緒ちゃんが謝ることじゃないのに。カタカタと震えたまま、真緒ちゃんはずっと頭を下げてた。

…怖かったのかもしれない。

真緒ちゃんだって一人の人間で、一人の女の子で。あんな見た目の先輩に逆らうなんて勇気のいること。


色々起きてしまったあととはいえ、真緒ちゃんが駆けつけてくれた時の安心感はすごかったのだから。


私には、真緒ちゃんを責める理由も、怒る理由もなにもなかった。


「真緒ちゃん、頭をあげて。私怒ってないよ。むしろ感謝してるくらい」

「でもっ」

「真緒ちゃんでしょ?先輩を呼んできてくれたの。そのおかげで私は大きな怪我をせずに済んだの。だから、もう謝るのも、自分を責めるようなこともしないで?お願い」

「…優しいね、莉那は」

「普通だよ」



真緒ちゃんはその後も何か言いたそうだったけど、ぐっと押し込むような、そんな仕草が少し気になった。