「ま、まおちゃん待っ…あっ!」
真緒ちゃんに追いつくことしか考えてなかった私は
足元を見ずに走っていた。
その結果、階段で足を滑らせる始末。
あ、これ…顔から床に落ちちゃう…ね。
こんなの、漫画の世界だけだと思ってた。
無意識に、ぎゅっと目を強く瞑る。
床につくまで、あと…
3………2……、、
「莉那っ!!」
…あれ、痛くない。
真緒ちゃんが受け止めてくれた…?
でも、これは真緒ちゃんの匂いじゃない。
じゃあこれは誰……?
「大丈夫?怪我してない?」
「っ…!!」
顔を上げると、そこにいたのはやっぱり真緒ちゃんじゃなかった。
ネクタイの色、私のひとつ上の先輩…?
…うそ、見られた見られた見られた。
よりによって、知らない男の人に。
真っ白なこの髪と、この水色の目を。
見られてしまった。
「あ、あ……、」
「ちょっと、呼吸浅いよ。落ち着いて」
思い出してしまったのだ。このタイミングで。
あの頃の、まだ小学生くらいの嫌な記憶が。