「冬崎(ふゆさき)先生」

「え……?」


 彼女は、再び俺の前に現れたーーー。

 
「矢薙……?」

「久しぶり、先生」


 二年ぶりに再会した彼女は、すっかり大人びていた。 俺の知らない彼女が、そこにいた。
 二年前の彼女とは雰囲気がだいぶ変わっていた。黒髪だった髪は明るいピンクブラウン系になっていて、あの時長かった髪は、ショートボブになっていた。
 大人っぽいワンピースを着て、黒いショートブーツを履いた矢薙は、すっかり大人になっていた。

「矢薙……なのか?」

「そうだよ、先生。覚えててくれたんだ?」

「すっかり見違えたよ。 大人になったな」

 矢薙は嬉しそうに「だって私、もう二十歳だよ? 大人になったに決まってるじゃん」と俺に微笑みかける。

「ねえ、先生。私が先生に言ったこと、覚えてる?」
 
「え……?」

 矢薙が、俺に言ったこと……?

「二十歳になったら、私と結婚してほしいって話」

「え?……あ、あれは、冗談じゃなかったのか?」

 俺は冗談だと受け取っていた。だから、信じてもなかった。
 
「言いましたよね?私。本気だって」

 矢薙のあの言葉は……冗談なんかじゃ、なかった……。
 
「だから私、二年待ちました。二十歳になるまで、待ちました」

「矢薙……」