「……この予算案は誰が作ったのかな?」
 
「あ、私が」

 
 作り笑顔を浮かべたジョシュア殿下の質問に、小太りのカール子爵が手を挙げた。
 褒められるとでも思っているのか、カール子爵はやけに自信満々な表情でジョシュア殿下を見つめている。

 
「そうか。これはカール子爵が……」
 
「はい! 私は昔からこういった計算が得意でして、今回もぜひ私がやりましょうと率先して動いてですね……」

 
 意気揚々と話すカール子爵を、ジョシュア殿下はニコニコと優しく微笑みながら眺めている。
 その笑顔が偽物だとわかっているのは、この中では私とトユン事務官だけだ。


 
 殿下……すごく怒っているわ。みんなはどうしてあの禍々しいオーラに気づかないのかしら?
 爽やかぶったあの王子スマイルに騙されすぎでは?
 きっともうすぐ……あっ。