まだ足に力が入らなかったけれど、気合いでなんとか立ち上がる。
 殿下を待たせるわけにはいかないからだ。

 
「そういえば、鼻の痛みはどうだ?」
 
「……まだ少しヒリヒリします」
 
「そうか。この薬はたしかに痛みはあるが、この国のどの薬よりも治りが早いんだ。それに、傷も綺麗に消える。だから安心しろ」
 
「え……?」
 
「小さくても、顔に傷が残ったら嫌だろう?」
 
「…………」


 
 何、それ。
 まるで、私の肌のことを考えてその薬を選んでくれたような言い方……って、そんなわけないよね?


 
 ジョシュア殿下からの優しい言葉に驚きながら、私は彼の斜め後ろについて歩き出した。