「……殿下。今、思い出に浸っていたのに……」
ドキッとさせられたことが悔しくて、少し恨めしい目でジョシュア殿下を見上げる。
殿下はそんな私からの視線を気にした様子もなく、ニヤッといつもの嫌味な笑みを浮かべた。
「今の俺はセアラにキスできるんだぞって、昔の俺に見せつけてあげないとね」
「過去の自分に対して優位に立ってどうするんですか」
「だって、あの黒髪の少年がセアラの初恋の相手だったんでしょ。俺だと知らずに。そんなの腹立つからね」
自分にヤキモチ焼いてどうするの!?
「そうだ。もう1つ自慢しないと」
「……なんですか?」
「今夜、俺はセアラと……」
「ででで殿下っ!!! こんなところで何を言う気ですか!?」
慌ててジョシュア殿下の口を塞ぐと、殿下が楽しそうに笑い出した。
私の困った顔や焦った顔が好きなのは相変わらずのようだ。
もう……! 本当に意地悪なんだから!
でも、そんな意地悪なところも可愛いと思えてしまうくらい、今の私はジョシュア殿下の虜になってしまっている。
これから先も、この腹黒王子に私は何度も翻弄されるのだろう。
……まあ、心から笑っているジョシュア殿下を見てるだけで幸せだからいっか。
そんな人を好きになってしまったのだから仕方ない、と私は諦めたようにクスッと笑顔を返した。


