「……よし」


 いつものように秘書官の制服に着替えた私は、襟元で光るブローチを見てにっこりと微笑んだ。

 初恋の男の子にもらったブローチ。
 小さい頃はよくつけていたけれど、大人になってからつけるのは初めてだ。



 うん。なんだか勇気をもらえそうな気がする!



 ジョシュア殿下が好きだと自覚した私は、この気持ちを殿下にどう伝えればいいのかと考えていた。
 今さらどんなタイミングで伝えればいいのか、まったくわからないのだ。



 いきなり好きですって言うのもおかしいわよね?
 どうすればいいのかしら……。



 頭の中でぐるぐる考えながら執務室に向かうと、すでにジョシュア殿下が仕事をしていた。
 こんなに朝早くから殿下がいるなんて非常にめずらしい。


「おはようございます。ジョシュア殿下。今朝はお早いですね」

「ああ」

「!?」


 そう言って顔を上げたジョシュア殿下の目の下には、真っ黒なクマができていた。
 爽やかさを失われたボロボロの王子は、生気のない目で私を見上げる。