「到着しました」


 そう言われて馬車から降りた俺たちは、その古い教会を見て口をポカンと開けた。
 想像以上に古くてボロボロの教会。
 床も椅子も壁も所々穴があいているし、埃もたまっている。

 しかし、俺はその異質な状態が一瞬で気に入った。


「……申し訳ございません。殿下。こちらではなく、新しい教会に行きますか?」

「いや。ここでいい。汚いが、どこか落ち着く。……この服は汚しても大丈夫か?」

「もちろんでございます。割れた板などでお怪我だけはされませんように」

「わかってる」


 そう答えるなり、俺は教会に入り真ん中あたりの長椅子に座った。
 こんなに汚い椅子に座るのは初めてだ。



 ……変だな。なぜか落ち着く。



 誰もいない、薄暗い教会。
 人目を気にすることも、自分を作る必要もない。

 そんな静かな空間に馴染んでいると、女の子が突然やってきた──。