ジョシュア殿下はいつも笑顔で素敵ですね。


 物心がついた頃から、よく言われた言葉。
 穏やか、優しい、落ち着いている、臣下にも国民にも笑顔を向ける完璧な王子。

 いつからか、俺はみんなの求める完璧な王子を演じるようになっていた。


 王宮で開かれるパーティーや、外交での挨拶。
 王子として参加する国の催し事。

 子どもだからと怠けることなく、俺は常に完璧な王子として人前に立った。


「まだ5歳とは思えないくらいに優秀な方ですね」
「これは将来が楽しみだ」


 そんな言葉にも、謙遜しながら笑顔で振る舞う。
 王子として生まれたのだから当然だ──そう思っていたはずなのに、なぜか突然プツッと糸が切れたように笑顔を作れなくなった。

 7歳の誕生日を迎えたすぐあとだったと思う。