「セアラ。ルイア王国に来て、俺と結婚する気はないか?」

「!」


 いつの間にか、隣に座っていたフレッド王子が私の手を握っていた。
 大きくて温かい手に包まれて、頭の中が一瞬でパニックになる。



 え? 私、今プロポーズされた?
 フレッド殿下に??



 真っ白になった頭の中で、ドロシーがピョンピョンと飛び跳ねている。
 まるで『ほら。やっぱり! 私の言ったことが現実に!』とでも言って喜んでいるかのようだ。



 プロポーズ……これを受けたら、私にも婚約者ができるのよね。
 秘書官を辞めて、ちゃんと結婚できる。
 でも……。



 生まれて初めて結婚の申し込みをされたというのに、なぜか私自身の心はドロシーのように小躍りしていない。
 嬉しい気持ちよりも戸惑いの気持ちが強くて、フレッド王子の顔を真っ直ぐに見ることができずにいる。